ivory
中洲の近くにある、リッチなホテル。

地下1階のラウンジからは素敵なジャズ演奏が聞こえる。

「ユウ。会いたかった。」

禿げる前に潔く切ったであろう坊主に黒いスーツに合った強い眼差し。上客の城崎だ。

「2週間ぶりだね。私も今日がかなり楽しみだった。」

「とりあえずメシ食いに行こうか?」

「うん!!」

柔らかい表情の内面で胸を撫で下ろす。

“ラッキー。今日は楽な日だ。”

中洲にある高級な寿司屋で食事をしてお洒落なバーで飲み直してホテルに戻る。

広々とした部屋にガラス張りのバスルーム。

大きな正方形のバスタブにお湯を入れてソファーで煙草を吸っている城崎の横に座った。

「こんな上等な女を抱けるなんて俺は何てラッキーなんだ。
六本木にもお前みたいないい女はいないよ。」

赤い顔で城崎は熱い眼差しをこっちに向けた。

「私も城崎さんに会えるのがすごく生き甲斐なの。
嫌なお客さんの前だと笑うことも出来なくなるし。
サービス業失格かな。」

“デートコースで朝まで貸し切り。
しかもこんなリッチなホテルだし。
プレイも至って普通。
見た目も気持ち悪くないし。
こんなに楽な客はあんた以外に思いつかない。”

ゆっくり唇を合わせキングサイズのふかふかしたベッドに倒される。

壁一面の大きな窓から黒と青の絵の具を混ぜて塗りたくった様な空が広がっている。

天空からもし今の自分を見ることが出来たらさぞ気色悪い顔をしてるんだろうな、って思った。
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