ivory
重たいドアを開くと、3日前に会った男がいた。

ソファーの背にもたれ、バスローブに身を包み、こっちに向かって下品な笑みを浮かべている。

ずんぐりむっくりな体型に大きめの丸顔。

はげ上がった頭におまけ程度に残った髪をいつも通りセットしてある。

顔に凹凸があまりなく、目も細いから、いつも笑ってる様に見える。

36、7歳位だろうか。

「ユウちゃーん!!今日はもうこの時間しか空いてないってお店の人が言うからさぁ・・・
待ちくたびれちゃったよ〜」

私は男の足元にしゃがみ込み、男の太ももに顔を乗せ上目遣いで申し訳なさそうな顔をした。

「ごめんねぇ。お給料日を過ぎたばっかりだからかな。ちょっとバタバタしちゃって。」

身長が168センチある私は下手したら客よりデカくなる為、なるべくこうして客を見上げる様な姿勢を取る。

そうした方が印象が良い。

これは前に店にいた、元ナンバー1のお姉さんに教えて貰ったことだ。

「仕方ないよなぁ。こんなに可愛いんだもんなぁ。人気者になるはずだよ。」

“常套句なんてもううんざり。

そんなにおだてなくても、金さえ貰えればあんたの望むことは出来るんだから。”

「本当にごめんねぇ。
今日は70分コースしか無理みたい。
でも短くてもラブラブしよーね。
ちょっとお店に電話するね。」

店の車で指定された部屋まで送られ、客のいる部屋に入ったら店に電話して、それから時間がカウントされる。

そしてプレイ終了時間の10分前に店から電話がかかってくる。

それからシャワーを浴びて服を着て部屋を出て次の客の元へ――

それがデリヘル・・・デリバリーヘルスの形なのだ。
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