ivory
小柄な女の先輩は察したのか、含み笑いをしながら窓際で友達とたむろしているヒロユキ先輩にこっちを見ながら口を動かした。

先輩は友達に冷やかされながら足早にこっちにやって来た。

白くて小さい顔が近付く。

ヒロユキ先輩とこんなに近付いたことなんてあったけ?

それから私が何を言ったのか覚えてない。

ただ先輩と2ショット写真を撮った直後にチャイムが鳴って、先輩が片手を挙げて笑って教室に戻って行ったんだ。

動けない私を、シャッターを押してくれた夏穂が引っ張って2Aの教室に帰ってくれたんだ。

「美沙、ヤッタね!!」

そしてふわふわした気持ちのまま式が始まって、先輩の後頭部ばっかり見てたんだ。

式が終わってもまだドキドキしてたけど満足感でいっぱいだった。

‘いい思い出になった。もう思い残すことはない’

教室に戻ってウキウキしながらエイタから来たメールに返信してた。

“今日早めに終わるからカラオケ行けるよ☆”

「おい、加納!」

顔を上げると、野球部の野口が廊下を指差した。

「呼んでる。」

指す方には、ヒロユキ先輩と、よく一緒にいる小麦色の肌をした背の高い先輩がちょっと笑って立ってた。
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