ivory
「おー久しぶり!」

2年半ぶりの先輩の声は記憶の中の声と少しも変わってなかった。

先輩が高校を卒業してからもごくごくたまにメールのやりとりをしたり電話をしたりはしていたけど、いつの間にか音信不通になっていたから。

「携帯変えてしばらくしてから電話したら先輩も番号変わってるんだもん。
もう連絡取れないだろうと思ってた。」

「どっちかが彼氏・彼女と別れて寂しくなった時にしか連絡してなかったしね。」

「それって随分都合良いよね?」

「お互い様だけどね。」

同じタイミングで笑う。

「そー言えば今度の盆は地元に帰るん?」

地元・・・もう長いこと帰ってない。

「んーどうかな?帰ってもすることないし。

だいいち実家が嫌でこっちに出て来たから。」

ウチの事情を少しは知っている先輩は、そっか、と小さく呟いた。

「俺も長いこと地元帰れてなかったけど今回は休めるからたまには、と思ったんだけどね。
お前が帰らないなら楽しくないよな。」

調子が良くってその気にさせるのが上手いとこも変わってない。

でも自然と口元が緩む。

「私も帰ろうかな?福岡からなら高速バスで帰れるし・・・」

私はmixi上で再会出来た時から聞きたかったことを、何でもない様に聞いた。

「先輩は今、彼女いるの?」



「いや。特定の、はいない。」

「特定のは、かぁ。
乙女の敵だね!いつか刺されるよ?」

ちょっとテンションが上がった。

「お前は?彼氏は?」

男・・・昨日ラストについた生理的に受け付けない客の顔を思い出してしまって鳥肌が立った。

「寂しいことにいない。」

嘘はついていない。

先輩と話してる時は『ユウ』じゃなく『美沙』でいたかったんだ。
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