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ラブホで待つ変態の客の元へ‘宅配’されるまでの車内。

「ユウ、今彼氏いるんだっけ?」

彼女の吸う、細くて茶色い煙草はチョコレートみたいな何ともいえない甘い匂いがする。

いつもはそれをとてもおいしそうに吸うのに今日は何だか嫌々吸ってる感じだ。

「ううん。しばらくいないなぁー。
休みの日まで体触られたくないし。
レイカさんは?」

「あたしね、昨日彼氏にバレたよ。」

「キャバで働いてる、ってずっと言ってたんだけどさ、朝まで予約が入ってたり、バイト後に彼氏と会ったりしたらもちろんキャバ嬢みたく髪セットしてないワケじゃん?で―――」

レギュラーで働く風俗嬢は、たとえ風俗誌に顔を出してなくてもこんな理由で彼氏にバレてしまうことが多い。

私もその一人だ。

ナンパされて付き合い始めた、タカシ。

4個上で不動産の営業をしていた、やたら饒舌な笑顔が可愛い男だった。

でも、キャバで働いてると言った私が実は風俗嬢だと知った時は、明らかに軽蔑した顔をした。

「いや、仕事の付き合いとかでデリの子呼んだりヘルス行ったりするけどさ、やっぱ自分の女が、って考えるとさ----、」

“いつからアンタの所有物になったんだろ?私。”

「やっぱヒくわ。」


レイカは同性でも見惚れる位の綺麗な小さい顔をこっちに向けた。

「何だろーね。そんなに悪いことなのかな?風俗で働いてるって。」

ドライバーの飯山は何も聞こえないかのように運転に集中している。

いつもは女の子の会話に混ざってジョークを飛ばすのに。
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