幕末〓冷血の鬼
しかし土方さんが剣を鞘から抜き龍馬さんをそれ以上私達に近づけさせなかった。


「土方さん。おぬしは何故新選組にいちょる?」


「京の治安を守るためだ。」


「ならわしと手を組まんか?」


龍馬さんの言葉に私と土方さんは目を見開いた。


「噂では、土方さん。おぬしは頭が優れているときいちょる。わしは大きな犠牲を出しとうのうし、多くの血が流れんのも嫌じゃき。土方さんみたいな才が必要じゃ。」

「断る。」


土方さんはそう短く言うと龍馬さんを睨んだ。


「俺は近藤さんから離れるつもりはねえ。」


「そうか、残念じゃき。わしはもう行くきに。恋花さん、また。」


龍馬さんはそう言うと私達に背中を向けて歩いて行ってしまった。


「土方さん、龍馬さんを斬らないのですか?」


さっきまであんなに殺気を感じてたのに、龍馬さんの背中を斬りつける様子のない土方さんに聞くと、土方さんは静かに頷いた。
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