幕末〓冷血の鬼
その後、山南さんは牢に入り私は切腹の日まで山南さんの世話をするように言われた。


「山南さん………」


「何ですか?」


もうすぐで死ぬと言うのに山南さんは穏やかで人懐っこい笑顔を私に向けてきた。


「どうして、逃げ出したのですか?」


私がそう言うと山南さんは着物の右腕の裾を捲った。


「これは……」


右腕には刀の傷痕が深く刻み込まれていた。


「池田屋の事件の前にへまをしてしまいましてね。私の右腕はもう刀を振るえないのです。」
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