幕末〓冷血の鬼
「それで脱走したのですか?」


「はい。」


私は、何も言えず黙っていると戸を開け沖田さんが入ってきた。


「恋花さん、山南さんと2人で話をしたいのですが………」


「わかりました。」


私は、牢から出て戸に手をかけると山南さんが私を呼び止めた。


「恋花さん、貴女は私が切腹するときは部屋にいて下さい。貴女には、見せたくありません。」


「………わかりました。」


私がそう言うといつもの優しい笑顔を山南さんは向けてくれた。


私は、その山南さんの姿を目に焼き付けるようにジッと見て牢から出た。


その後、私は山南さんの言うとおり部屋から出ず、山南さんは沖田さんが介錯をしたと聞いた。





慶応元年二月二十三日、山南さんは切腹をした。
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