幕末〓冷血の鬼
しばらく、馬を走らせると大津の端の方まで来ていて私は山南さんが逃げ切ってくれたとホッとした。


しかし、その期待は直ぐに裏切られた。


「おや、沖田くん。君が私を迎えに来てくれたのですね。」


山南さんは、石の上に座っていて私を笑顔で迎えた。


「ど………どうして…逃げ切ってくれないんですか!私は、あなたに死んでほしくはないのに!」


「もう逃げるのは嫌になりました。自分の弱い気持ちから逃げて、腕が動かない現実から逃げて……もう逃げたくはないのです。」


「だから、わざと置き手紙を置いたのですか?あなたが本気で逃げようと思えば逃げれたはずです。なのに、あなたは見つかるようにわざと手紙を置いて屯所から出て行った。」


私がそう言うと山南さんは寂しそうに笑った。
< 274 / 627 >

この作品をシェア

pagetop