幕末〓冷血の鬼
伊東の所に行くと沢山の隊士が伊東を囲んで座っていた。


伊東は懐から紙を出しそれを読み始めた。

「数ならぬ 身をば厭はず秋の野に 迷ふ旅寝も ただ国のため」


伊東の歌はばかにならなく、俺は伊東をジッと見ていた。


「すめらぎの 守りともなれ 黒髪の 乱れたる世に 死ぬる身なれば」


「春風に 吹き誘はれて 山桜 散りてぞ人に 惜しまるるかな」


伊東の詩を聞いて隊士達はホウと息をつき感心した眼差しで伊東を見ていた。


「おや、土方さんも来ていたのですか?」

後ろから声がして振り返ると総司がいた。
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