幕末〓冷血の鬼
「新八良いか?」


槍を構えた左之助に俺は頷き一気に伊東を斬りつけた。


こんなことになるとは考えていなかった伊東は刀を抜く事もなく、あっという間に俺の刀と左之助の槍で絶命した。


「死んだか?」


物影から出てきた土方さんは、伊東が死んでいるのを確認するとフッと笑った。


その姿は、月明かりに照らされながら自分の足元にある死体を笑う、まさに鬼のような姿であった。


「原田、永倉。伊東の死体はこのままにして俺達は物影に隠れるぞ。」


土方さんの言葉に俺は驚いた。


「土方さん、まさかあんた伊東をオトリにして敵を罠にかけるきか?」


「ああ、そうだ。俺達の新選組を荒らした罪がどれだけ重い事を彼奴等にわからせてやるんだよ。」


土方さんは、誰よりも新選組を大切にしている。


だから今回の事は、土方さんが一番頭にきてるのだろう。
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