幕末〓冷血の鬼
「斎藤さんが一瞬で……?」


「ああ。副長には守らなければいけないものが沢山あり、その中で失ってきた物も沢山ある。副長は、守るために強くなったと言っていた。」


「守るため………。」


「すまない。話が長くなってしまったな。水を汲みに来たのだろ?」


「はい。」


「谷、副長からは離れるな。」


何故そう言ったのか聞こうとしたが、斎藤さんは自分の部屋に戻ってしまった。


「近藤さん、遅れてすいません。」


水を汲み近藤さんの部屋に戻ると近藤さんは寝息をたてて眠っていた。


私は近藤さんに濡らしなおした布を額に乗せ斎藤さんの言葉を思いだした。


『副長には守らなければいけないものが沢山あり、その中で失ってきた物も沢山ある。』


(土方さんはこれ以上大切な物を失って欲しくない。近藤さんも早く元気になってもらわないと。)


その後も私は、近藤さんの世話を一週間やった。
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