幕末〓冷血の鬼
私は着物の中から、小さな薄汚れた御守りを取り出した。


「これは近藤さんからもらった御守りです。この御守りは、あなたが持って下さい。」


恋花さんは、慌てて首を振り御守りを私に返そうとした。


「そんな大切な物持てません!!」


「私は、この状態で刀を振るえません。近藤さんのそばにもいられないし、あなたの事を守る事も出来ない。だから、せめてこれはあなたが持っていて下さい。」


(大切なあなただからこそ、私は恋花さんに御守りを預けたい。)


生きてまた笑顔で私にこの御守りを返しに来てくれることを願って……


恋花さんはその御守りをギュッと握りしめて私の顔を真剣に見た。


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