幕末〓冷血の鬼
「それから、近藤さんを頼む。」


俺がそう言うと恋花は顔を上げた。


「俺の代わりに近藤さんを見ていてくれ。斎藤達は、戦で近藤さんの傍を離れる事が多いからな。お前にしか出来ないことだ。」


「私だけ?」


「ああ、そうだ。お前にしか出来ない役割だ。」


「………わかりました。でも無事帰って来て下さいね!」


「ああ、援軍を連れて生きて帰って来るさ。」


俺がそう言うと恋花は、涙目の顔でニコッと笑った。


「気をつけて行ってきて下さい。」


「行ってくる。」


俺はそう言うと、恋花に背を向け1回も振り返らずに部屋を出た。


今、振り返れば恋花をまた抱きしめそうになったから。
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