四行だけのラブレター
「彩愛…か。なんか、名前なんて滅多に覚えないのにな。米倉の名前は、覚えられる気がする」

平は、そう言って笑った。
花が好きなのだろうか。

「平…。平は、花が好きなの?」

私の言葉に、平は驚いたような表情を見せた。

「花が好きなんじゃない。菖蒲と桜が好きなんだ」

『彩愛』と『咲良』。

ふいに、私に何かがよぎった。

「私は彩愛。私の妹ね、咲良って名前なんだ」

すると、平はまた驚いたような表情を浮かべていた。

「…そうなのか。でも、なんで花が好きかなんて聞いたんだ?」

平が、優しい表情で私に尋ねる。

胸の鼓動は止まらない。
体が熱い。

「入学式でね、平が桜並木で…」

桜を見つめていた…。

「俺は…桜の花より菖蒲が好きだ」

また、胸が高鳴る。

やめて。

「菖蒲」「彩愛」が好きだなんて、言わないで…。

菖蒲(アヤメ)…
菖蒲(ショウブ)…

花は、全然違うけど。

「俺は、ショウブより、アヤメが好き」

言わないでほしい。

これ以上、胸を高鳴らせないで。
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