君のそばに
私たちの進む足がほぼ同時に止まった。
清水さんは椅子に座ってプログラムか何かを読んでいた。
何故か私の足は進むに進まなくて、どうしようかと悩んだ。
別に悩む必要なんかないのに…。
柚はまるであそこにいる獲物を捕らえようとするライオンのような鋭い目つきをしていた。
めっちゃ清水さんの事、敵視してる……!?そんなに睨んだら清水さんがこっちに気付いちゃうよ…!
…いや、気付いちゃいけない訳じゃないけど……!
ああ〜…どうしよう……!
とりあえず午後のが始まっちゃうから……
「…柚、……い、行こう…?」
私は柚の手を取り、動かない足を無理矢理進めた。
手を振りほどかれるかと思ったけど、柚は大人しく私に従ってくれた、……視線は獲物を捕らえたままだったが…。
「お、…おはよう……。」
私は清水さんに挨拶をした。ひきつった笑みを添えて…。
それに気付いた清水さんは顔を上げてニッコリした。
「おはよう。昼なのに、おはようは変だね。フフフ…。」
清水さんは腰までかかるくらいの黒い髪を、今日はポニーテールにしていた。
いかにも気合い十分という感じだ。
「とうとう本番だね。一生懸命頑張ろうね。」
清水さんはそう言って笑った。
「うん!
……私まだ、上になるっていうのが不安で……。」
私の中で一瞬、騎馬から落ちた感覚が呼び起きた。
気付いたら視界がグラッと揺れていて、時間がスローモーションに過ぎていく…。
私は落ちて行った……。
それを思うと
怖い………。
これからそれをやろうとしてるんだ。
…あ、ヤバイ…。足が震えてきた……。
「…沙矢…。……大丈夫…?」
私の様子に気付いた柚が優しく声をかけてきた。
何だよ…私……。
何ビビってんだし……!
大丈夫だよ。
自信、持たなきゃ……。