君のそばに
私たちはあれから何事もなかったように所定の位置についた。
やっぱりまだ周囲の視線は痛かったけど、それもすぐ無くなった。
そして何故だか清水さんは私たちが戻った時に、その場にはいなかった。
…私はホッと胸を撫で下ろす。
だって気まずいに決まってんじゃん。さっき柚があんな事言ったんだから。
どこかで泣いてるのかな…。
今やってる種目は借り物競争で、あと2つ終わったら騎馬戦だ。
騎馬戦が近づくにつれ、緊張も強くなってくる。
傍から見れば、たかが騎馬戦ごときで、って言われるかもしれない。
でも、私にとっては大変重大な事で”たかが”で終わらせる事は出来ない。
胃もキリキリと痛む。
「あ、そうそう沙矢知ってる?」
と、柚がさっきとは変わって明るい調子で言った。
「ん?何が?」
「借り物競争に千春くん出るんだって!」
「嘉賀くんが?」
柚がそう言ったのでグラウンドで行われている借り物競争に目線を移した。
まだ1年生がやっている途中だ。
スタートとゴールのちょうど真ん中あたりに置いてある紙を拾い、それに書いてある内容に当て嵌まるものを見つけて、ゴールをするというものだ。
嘉賀くんは2年生の列の一番後ろに待機していた。
嘉賀くんの近くにいる応援団の女子が黄色い声援を上げている。多分、嘉賀くんにしているのだろう…。
まだ2年の番にもなってないのに声援がすごいな……。
そして私は一瞬、黒のポニーテールの女子が目に入った。
ん……?あそこにいるのは…。
その応援している女子の中に、私は清水さんの姿を見つけたのだった。