君のそばに
「あ〜、良かったぁ!伍棟さんも千春くんが好きだったら、どうしようかと思ったの!」
私をどうするおつもりだったんですか……。
…それにしてもすごい変わり身が早いな…。清水さんって二重人格なのかな?
「あの、一つお願いしてもいい?」
と、さっきとは打って変わって、瞳を潤ませながら可愛らしい口調で清水さんが言った。
「…あ、はい!何でしょう!?」
「クスクス…どうして敬語なの?伍棟さんって本当、面白いよね。」
…敬語になったのは誰のせいですか……。
私は思わずその言葉が出そうになった。
けど、何とかそれを引っ込めた。また不機嫌になられたら、ちょっと困るから……。
「あのね、これから千春くんとあまり仲良くしないで欲しいの…。」
……え…っ…?
「それは…どうして……?」
「絶対、千春くんの事を好きになるから。」
嘉賀くんを私が好きになる…?
私の事は私が一番知ってるんだよ。なのに何でそんな事が言えるの…?
私、恋愛対象としては見てないって言ったのに……。
信用されてないのかな…。
そんな疑惑の表情を浮かべた私に念を押すように、清水さんは
「お願い…伍棟さん……。」
そう言って私の手を、その小さな手で包みこんだ。
その後、あんなに不安だった騎馬戦は予想していたような事態には陥らず、何とか成功を納めた。
それは私が清水さんのお願いを受け入れてしまったからだ…。
それからの清水さんは以前よりも更に優しくなり、
私はこれで良かったのだろう、と思っていた……。