君のそばに


いかにも旅行日和と言えそうな雲一つない晴天。透き通るような空の青が落ち込む私の気持ちをいくらか癒してくれた…。


今日は嘉賀家の別荘に行く日。



私は、はぁ、と軽くため息をついた。

だって車内に会話がないんだもん。息抜きが目的なのに逆に息がつまるよ…。




私の後ろに嘉賀くんと清水さんが座って、前に私と柚と実春が座る。

嘉賀家の黒い外車が私たちを乗せ別荘を目指し高速道路を走行中。



その間、清水さんは嘉賀くんに何か話をしようとヤキモキしている。


柚はその清水さんをなるべく意識しないようにヘッドフォンを耳に当て、窓の外を流れる景色に見入っていた。


嘉賀くんは……私の真後ろに座っていて、いまいち状況が把握出来ない。
でも嘉賀くんの声がしないことから、柚みたいに窓の外を眺めてるか何かしてるのだろう…。



実春はというと、”旅行が楽しみで眠れなかった”んだって。

だから今現在、車にグラグラ揺られながら爆睡中…。



お前は小学生か!



柚はあれからあまり口を聞いてくれなくて、私は少し寂しかった。

でもそれは私がいけないという事は分かっている。

だから車内で何も話せなくても仕方ない。


嘉賀くんと話そうにもいつも話が続かなくて、私はネタ探しに困るハメになる。

それに、嘉賀くんと話すのを清水さんが許さないと思うし…。



だから私は車内では実春と話そうなんて考えていたのに……。


実春はぐっすり眠っていて起きる気配はなし!


私はもう一度ため息をついた。


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