君のそばに
颯爽と立ち並ぶ木のトンネルをくぐり抜けた先にその別荘はあった。
周囲に建物がないせいか、その別荘だけ一際目立って見えた。
小高い丘の上に、お城のような嘉賀家の別荘。後ろには海が広がり、潮風を気持ち良さそうに受けている。
すごい別荘……。
実春がそこらのホテルより良いって言うわけだ…。
車から降り立った私はその迫力にア然とした。
車内から見るのと、外に出て見るのとは、迫力が全く違う。
けど、他のメンバーはそんな景色など見飽きてる、とでも言うようにズンズンと中に入っていく。
私は少し躊躇しながらもそれにつられるように中へと足を踏み入れた。
中は広々としていて床は大理石だ。壁には絵画が飾られていて、天井にはキラキラと輝く大きなシャンデリアがつけられている。
もし、落ちて来たら大惨事だな…。
綺麗だな、とか、すごいな、みたいな印象より
私としては重そうで今にも落ちてきそうなシャンデリアにそんな印象を持った。
そして、何部屋あるのか分からないほどたくさんある中の一つに私たちは通された。
中は全て個室だ。
「あとで、海に行ってみない?」
柚が部屋に入ろうとしていた時、私は少し顔を引き攣らせながら言った。
まだ怒ってたりするのかな…。
朝からまともな会話ひとつしていなくて、私もどう接していいか分からなかった。
しかしそんな私の予想通り、
「……ん…。」
柚はこちらを見ずにそれだけ言うと部屋に入ってしまった。
ああ〜……まだ怒ってるよ…。
私はまたも、お願いを受けた事を後悔した。
柚がこんなに怒るなんて思っていなかったから…。