君のそばに


実春は水色のTシャツにジーパン、サンダル、とラフな格好で現れた。
こちらに着いて着替えて来たようだ。


実春は私の隣に足を投げ出して座った。



「どうしたんだよ。背中が淋しいぜ?」

沈黙する私に実春が言った。


そりゃそうだろ。

浜辺に体育座りして海を眺めてる人を見たら誰だってそんな事思うよね。


「せっかく別荘に連れて来てやったのに、他の奴らも何か暗い顔してるし。」

実春はつまらなそうに、ため息をついた。




「お前の場合はアレだろ。柚とかの事だろ。」


それでも何も言わない私に実春が言った。



……こいつエスパーか…?


…いや、私が分かりやすいのか…?



「あ、何で分かったの?って顔してる。
お前の場合、分かりやすいんだよ!」

と、実春はニタニタと笑いながら言った。



…後者だったか…。


学校にいる時、柚とはバカみたいに沢山話すのに、今日はそれが全然ないもんね…。
柚があんな感じなのは清水さんのこともあるだろうけどさ。


…ていうか、そのニタニタ笑いが無性に腹立つ……。


「柚は怒ってるんだよ…。私がはっきりしないから…。」


「はっきりしないって何が?」


実春は遠くを見つめながら呟くように聞き返した。



「私が嘉賀くん…あ、千春…くんの事をどう思っているか…。」

私は”嘉賀くん”というと実春の性も”嘉賀”なため、あえて名前で呼ぶことにした。


実春は”あ〜…あれね…。”と少し顔を曇らせて言った。




何で実春がそんな顔をするのか、今の私には分からなかった…。




「…オレとしても、それは知りたいところだね…」


実春は小さくそう呟いた。





「え…?」


実春の声があまりにも小さかったせいか、それとも風と波の音が大きかったせいか、私の耳には届かなかった。


「いや、何でもない…。」

実春は少し残念そうに手を振って言った。





それから私たちは、たわいもない話をしながら別荘に戻った。



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