君のそばに



「…どうしても譲らないつもりか…。」


獲物を狙う鷲のように瞳を鋭くして嘉賀くんが言った。


その声は淡々としていたが、
…何だか怒っているようにも聞こえた。



「ああ。」



「…分かった…。…もういい…。」


嘉賀くんはそう言うなり、踵を返し室内へ…。


…その後ろ姿が、何だか淋しかった…。





この状況で私は何が出来たんだろう…。






何で、
こんなにも、切ない気持ちになるの…?





小さくなる嘉賀くんの後を、どこか楽しげに追う清水さん。



でも、今の私にはそんなことは気にならなかった。





去っていく嘉賀くんの後ろ姿が、今までになく小さく見え、


思わず抱きしめたいという気持ちになった…。




…どうして、こんな気持ちになるのかは、分からない。





…けれどそう思うだけで、それを行うことは出来なかった。









なぜなら

実春に2回目の



キスをされていたから……。






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