君のそばに
「先輩ーッ!」
すると、どこからか皐月の雄叫びが聞こえた。
その声の方に振り向くと、皐月はドタドタと床を踏み鳴らしながら走って来た。
何を急いでいるのか、必死な形相だ。
「何?そんなに急いで…」
「あの!実春先輩と付き合ってるって本当ですか!?」
私の言葉を遮って皐月は言った。
走って来たからだけでなく、どうやら興奮してるようでもあり、息を弾ませる。
「…そうだけど…。」
今頃知ったのか、と思いつつも、私は頷いた。
「どうしてですか!?」
「どうして…って…。」
確かに…。
…何で私、実春と付き合ってるんだろう…。
まぁ、単純にいえば…実春に告白されたからだ。
「…先輩、それっておかしくないですか?」
「え…?」
「だって嘉賀先輩が先に先輩に告白したんじゃないですか!告白されたから付き合うなんて、…それなら何で嘉賀先輩と付き合わないんです!?」
「……。」
本当にそうだ…。
その理屈なら嘉賀くんと付き合うべきだ。なのに、それはせず、後から告白してきた実春と付き合っている…。
それに告白の返事だってしてない…。
きっと、嘉賀くんはあの夜、私と実春がいる所を見て、…それが告白の返事だと受け取ってしまったかもしれない。
そう勝手に自分で思いこんでいた。
いや、…思いこみたかったのかもしれない…。