君のそばに
「へぇ、伍棟さんって嘉賀の弟の方と付き合ってるんだ。」
と、部長が興味深そうに眼鏡を上げながら言った。
…その時、私の目の錯覚か、…眼鏡がキラリと光った気がした…。
「えっと…」
「そうなんですよ!!ちょっと聞いて下さいよ、部長!」
と、また私の言葉を勢いよく遮って、皐月が言った。
「先輩ったらひどいんですよ!」
と、傍にあった机を叩きながら言った。既に皐月の興奮状態を表すバロメータはMAXに達しているようだ。
皐月が机を叩いた拍子に、そこで作業をしていた部員が驚いたようで、ビクッと肩を震わせた。
もちろん、皐月はそんなことに気付くわけがなく、怒涛の勢いで熱弁する。
「嘉賀先輩が先に先輩に告白したんですよ!?なのに、後から告白してきた実春先輩と付き合うなんて、ひどいです!!」
「そうだね。」
部長はサラリと頷いた。
「部長だって見ましたよね!?体育祭の時の嘉賀先輩の愛の告白!!」
「もちろんだよ。あれには男の僕でさえ痺れたね。」
「ですよね〜!!私もあんな告白されたいです〜!!キャ〜!」
「それにあのシチュエーションでの告白は中々、勇気と自信がないと出来ないと僕は思うな。」
「ですよね〜!!本当、先輩羨ましいです〜!!」
………。
…あれ……?
何だか、話がずれてません……?
…私の気のせいかしら…?
…確か、私が実春と付き合ってることについて話してたんだよね?
何だか嘉賀くんのノロケ話になってるよ〜……。
2人共、我を忘れて嘉賀くんに酔いしれてる…。
……何なんだ、この2人……。