君のそばに


「こら〜!見る相手が違うんじゃねーの?」


その声に私はビクッとした。

声の主は勿論、実春。
別にやましいことはしてないハズなのに、後ろめたい気持ちが私の中で充満する。



「なんだ、いつのまに来たの?」

2人に向けていた視線を実春に移して柚は言った。



「今。沙矢を探してたから。」

実春はそういうと私の方に視線を寄越す。私は咄嗟に目線をそらしてしまった。



「お熱いこと。悪いわねー、お邪魔虫で!」


「全くよ。おかげで沙矢とラブラブなスクールライフを送れねえじゃねーか。」


「な〜にが、ラブラブよ!今、一瞬にして全身に鳥肌が立ったわよ。
ご飯がまずくなるから、アンタがどこかに行きなさいよ。」


「はっ!お前にそんなこと命令出来る権利ねぇよ!命令されたって、”はいそーですか”って聞くわけねーじゃん。」



…私の気持ちを分かってるのか、分かってないのか柚は実春と言い合いを始めた。


ああ言えばこう言う、2人の言い合い。


ま、こんなのは日常茶飯事。

これがないと逆に2人が喧嘩したんじゃないかとヒヤヒヤしてしまう。





1年の時にあったんだ。


2人が本気で口喧嘩して、仕舞いには1週間全く顔を会わせず口も聞かずということが。

口喧嘩もこんな軽口とかじゃなくて、本気の怒鳴りあい。

途中から他のクラスから野次馬が現れるわ、先生が止めに入るわで大変だった。


おかげで2人の言い合いは学校の名物となりました。






………。




…そんなことを考えてるのに、頭の隅っこで2人の姿がちらつく。



自分のことなのに、その先を知ろうとするとフィルターみたいなものが邪魔してモヤがかかったみたいになる。




”私の気持ち”ってなんだろう。




”私”は何を思っているんだろう。





モヤがかかったその先に”私の気持ち”がある。



”私の気持ち”が知りたい。







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