君のそばに



「何ボ〜ッとしてんだよ?大丈夫か?」

その声に顔を上げると、実春が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。



「…うん。大丈夫。」

自分の中ではあまり大丈夫じゃなかったりするが、せっかく3人でいるのに1人で考え事は失礼だよね。


悩むのは1人になったあとにしよう。



「そういえば、文化祭の出し物は何に決まったの?」

と、食後のデザートをつつきながら柚が言った。
柚が食べているのは紅茶のシフォンケーキだ。



「喫茶店になったらしいよ。」


「ふぅん、喫茶店ねぇ。」


「その役割については今度クラスで決めるから。」

実春はそう言うと手を合わせて遅めのランチを食べ始めた。



その様子を見ながら柚がため息をつく。


「文化祭ってホント大変よね…。

私のとこも”弓道体験”とかいって子供でも出来るように距離を短くした的にオモチャの矢を当てる、なんてものをやるのよ。」

全く、誰が考えたんだか…。
と、ぼやきながら柚は話を続けた。



「道着も普段は着られないものだから、それを着て記念撮影する場所も設けるんだって。

子供はすごい喜びそうだけど、私たちはしばらく練習なしで準備をしなくちゃいけなくなるのよ。全く面倒くさいわよね〜。」


心底ウンザリとした口調で柚が言った。眉間には厚めの紙1枚挟めるくらいのシワが出来ている。



「今は大変だけど終わった後はやって良かったって思えるよ、きっと。」


私は今から文化祭が楽しみで仕方ない。


準備とか面倒だし大変だろうけど、この面倒臭さが青春してるって感じがする。

何か私、年寄りくさい…。



柚の所の弓道体験にも行きたいな。絶対的に当たらない気がするけど。


…で、柚には
「何、そのへっぴり腰はぁぁッ!!」
って公衆の面前で怒鳴られそう…。



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