君のそばに
え……キスしたことを何で謝る必要があるの。
しかも私に…。
…確かに嫌な気持ちにはなったけど、
私には関係のないこと。
嘉賀くんが誰とどこでキスしようが、…そう、関係ないんだよ…。
「何で謝るのか分からないって顔してるな」
嘉賀くんは少し微笑んで、いとも簡単に私の考えていることを当てた。
「だって謝られる理由なんか、ないよ」
私は真っすぐと見つめてくる嘉賀くんの瞳から逃げるように顔を反らした。
私はこの目に弱い。
何でだろう。
心臓がドキドキ鳴ってる。
「お前が好きだ。
なのに、オレは他の人とキスしてしまった」
心臓が大きく高鳴る。
「これはオレの自己満足かもしれない。
けど、伍棟の前でキスしたこと、オレ自身が許せない。
だから謝る」
嘉賀くんはそう言って、少し照れ臭いのか、静かに笑った。
そうだよ…。謝られても困るよ。
私はどんな顔をしたらいいの?
さりげなくまた告白をされてしまった私は動揺を隠しきれず、そのまま俯いた。
雨が顔を伝って行くのが、何とも不快だった。