君のそばに
校内に入り、皐月と別れるとすぐに教員室の前に立てかけてある赤いスリッパを手に取った。
スリッパを履くなり、私はすぐに自分のクラスへと向かった。
教室に続く廊下を歩いてると、他のクラスの出し物や装飾が見られて、何だかとても楽しくなってきた。
教室を暗くして室内プラネタリウムにしてるクラスや、映画をやるクラス、文化祭の王道であるお化け屋敷などがあった。
幽霊系全般が苦手な私はこれには決して行くまいと心に決めた。
そして教室に着いた。
内装は昨日とあまり変わらない感じだったけど、テーブルの上にメニューが置かれていたりと細かい部分が補充され、文化祭が始まればすぐにお客が入れるようになっていた。
「わぁ、すごい!」
私は思わず声に出していた。
すると、
「そうね」
と私の声に被さるように誰かの声が聞こえてきた。
さっきの皐月の時のように私は声がした方に振り向こうとした。
しかし、その声の主はスッと私の横を通り教室に足を踏み入れた。
「おはよう、伍棟さん」
そう言ったのは、清水さんだった。
「…お、おはよう…」
昨日のキスシーンを目撃してしまったから何だか気まずかった。
しかも私が覗いていたことを清水さんも知ってるし。
けど清水さんはそのことについては何も言わず、「よいしょ」と、背負っていた鞄をテーブルの上に下ろした。
そして私の方に向き直る。私はそれに一瞬ビクッとした。
何を言われるのだろうと構えていたら、清水さんはクスッと笑って
「そんな警戒しないで」
と言った。
「私も今日の午前にウェイトレスをやることになってるから、頑張ろうねって言おうと思ったの」
え…?清水さんもウェイトレスなの?
体育祭の騎馬戦の時も一緒で、今回も一緒…。
別に清水さんが嫌いということではない。
…けど、一緒の空間にいることで、また嘉賀くんのことで一波乱ありそうな予感がした。
私はその予感を清水さんに気づかれないように気をつけ
「うん、よろしく!」
と笑い返した。