君のそばに
「よっす!どうしたよ、沙矢(さや)!また授業についていけなかったか?背中が淋しいぜ〜!」
スラッと伸び、明るい茶色の髪をしたその人は、笑いの含んだ声で私の頭を撫でる。
「何だ、実春(みはる)か…。
大きなお世話だから、あっち行って。」
実春とは対象的に私の表情は暗く、私はまた教科書に視線を戻した。
実春はどうせ私を冷やかしに来たんだろう…。
私は実春を突き放そうと思ってあんな言い方をしたのに、実春は大して気にしていないようだ。
「あ〜、今日の授業難しかったよな〜!
何でこの訳がコレになるんだ、って感じ!」
実春は私の肩ごしから教科書を指さして言った。
「……」
「大丈夫だって!殆どの奴らが解ってないよ!だから落ち込むなって!」
それでも暗い表情のままの私を覗き込むように実春が言った。
私はゆっくり顔を上げ、実春と目を合わせた。
そこそこ顔を上げないと視界に姿が映らない。
「はぁ…。…そう言って、どうせ実春は理解出来てんでしょ?」
「まぁな!」
私は、既にその事を知っていながらも質問をしてみたが、
やはり、その質問には何の意味もなく
実春は舌を出し、ガッツポーズをして答えた。
くそ〜
腹が立つな〜、その笑顔。