君のそばに
私には今、目の前にある階段が憎くて仕方なかった。

教室は2階にある為、それを乗り越えなければいけないことは分かっている。


「はぁ…」

私は今日何度目かのため息をついて、
重い右足を一段目に上げる。



すると私の左肩が叩かれた。





誰よ…こんな時に…




私は少し不機嫌になりながら、ゆっくりと後ろを振り向いた。



「うす…」



「あ…。うす……」



嘉賀くんだった。
私はびっくりして嘉賀くんと同じことを繰り返す。



「昨日は大丈夫だったか?お袋さん」



「いや…かなり絞られ…ッ」



最後まで言葉を出し切る前に
くしゃみがそれを遮った。



「ふぇっくしょん!!」



私はそれを嘉賀くんに向かってしてしまった。



「………」



嘉賀くんは呆然としている。



「…ごめん……ッ…何か風邪ひいちゃったみたいで…」



私は軽く謝り、ポケットからティッシュを取り出すと思いきり鼻をかんだ。

女ならもっと可愛く鼻をかみなさい、と言われても仕方ないような、かみ方だ。


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