君のそばに
「……沙矢…!」
すると、私の名前が呼ばれ
私はハッとした。
自分でも気付かぬうちに意識が飛んでいたらしい…。
時計を見ると授業が終わって、5分も経っていた。
私はゆっくり後ろを振り返り声の主を見ると、
それは実春だった。
ん…?
どこか不機嫌…?
実春は右手を腰に当ててダルそうに立っている。
目元は少し細めて、
口はアヒルの口のように<への字>に曲げて、ぶすくれていた。
「沙矢どーしたんだよッ!?
何度も呼んだのによ〜!」
「………」
私は何も言わずに、
……正しく言うと話す気力がなくて
私はただ、実春を見つめていた。
その表情が尋常ではないと悟ったのか、
実春は<への字>に結んでいた口を解き、私の顔を心配そうに覗き込んだ。
「…おい…大丈夫……?」
「…うん…。…風邪ひいたみたい…」
「風邪ェ!?」
実春は信じられないという風に
声のボリュームを上げて聞き返してきた。