君のそばに
「この絵、もしかして伍棟がモデル?」
下絵を覗きこみなから嘉賀くんが呟いた。
突拍子もない話だが、私は嘉賀くんから話題が出たことに少し安心した。
「うん、そうなの。
ふふふ、何たって私は美術部の期待の星ですから!私を描かずに誰を描くっていうの!?」
自分では別だ、と言いながらもやっぱこういう風に言うと気持ちがいい。
しかも、心の中で決まった、とか思う私。
「…そうか…」
しかし嘉賀くんは一言そう言うと、また黙りこんでしまった。
あり?リアクション薄くない?
てか、もう会話終了?
チーン…
私は、軽く流されたことに傷つきながら、また新たな会話のネタを捜さないといけなくなった事に、ため息をついた。
しかし、その心配もなくなった。
「千春くん!」
それは清水さんが現れたからだった。