君のそばに
部員一同の視線が私に集まる。


「もぉ、先輩、声大きいですよー!!」


皐月は明らかに迷惑そうに言った。


だってそりゃ驚くでしょ!
清水さんが嘉賀くんを好きだったなんて!
そんなの聞いたら自然と声もデカくなるよ!




「清水先輩の態度見てたら一目瞭然です。先輩が嘉賀先輩といる時は特に酷いですよ。」


え…?
私といる時…?

何で??


私は理解に苦しんだ。


それが表情に出ていたらしく皐月はため息をついた。


「要するに、先輩は気付いてないんですね。嘉賀先輩の気持ちに。」


「…嘉賀くんの…気持ち……?」


…そういえば、柚にもそんな事言われたっけ…。

でも本当に何の事か分からないんだもん…。



「じゃあ、ヒントを出します。
今日、嘉賀先輩は何でここに来たと思います?」

皐月は後輩に指導するような口調で話した。


「…えっと、それは、…気になったから……?」


「”何”が?」


「その、部活の進行とかが…?」


「はぁーい、間違いです。」


皐月はペンを動かす手を休めずに言った。
いい加減、うんざりそうだ…。


「いいですか!?嘉賀先輩は美術部にいる誰かに会いに来たんです!」


「…誰か…?」




何となくだけど…


皐月が言いたい事が(ようやく)分かってきたかもしれない…




「真っ先に誰の所に来ました?」


皐月は今まで迷惑そうな、とかうんざりしてそうな顔をしていたけど、
この時だけは嬉しそうな笑顔を私に向けた…。



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