君のそばに
「…な、何で……?…こんな事になってんの…?」


あまりの無惨さに、私の言葉はかすれて出てきた。

私は何度も何度も目を擦ってみた。この現実を受け入れたくなかったから…。
でもいくら目を擦ろうとも下絵が元に戻ることはなかった。



「…ねえ……、何で…?」

もう一度言った。


しかし、その問いに返事は返って来ない。

いや、正確には誰にも答えられないのだろう…。



誰がこんな酷いことをするの?一生懸命頑張って、やっと下絵が完成したのに…。


こんな酷いこと、部員の誰かがするはずない。犯人は絶対他にいる!


でも犯人なんて、簡単に見つけられるわけないし…。

うーん、どうしたもんか…。




すると部長と皐月が騒ぎを聞き付けたらしく部屋に勢いよく飛び込んで来た。


「部長!皐月!」


2人はかなり急いで来たみたいで肩で息をしている。


「事件があったと津野さんから聞いて駆け付けたんだ。
…これは、ひどいな…。」


部長は来た早々、その場にしゃがみ込んで板につけられた傷を指でなぞった。

部長の顔を見たらかなり深刻な問題だということが分かる。



「あの、部長。これをやった犯人は分かりませんが…部員たちがこんな酷いことをするはずはないと思います!」


だって、今まで一緒に頑張って来たんだもん。


部長は視線を下絵から私に移した。

「分かっているよ、伍棟さん。

でも、これは深刻な問題だ。犯人を見つけることは大事だと思うが、今はこれをどうにかしなくてはいけないな。」


部長はそう言って立ち上がり、私たちの方に振り返った。


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