君のそばに
「え…?」
嘉賀くんがいきなり笑いだした事にも驚いたけど(ポーカーフェイスだと思っていたから)……、
”昔から変わんない”って…
どういう事……?
嘉賀くんは、私の事知ってるの?
「あの、…それってどういう……」
私がそう口に出そうとした瞬間
「こんにちは。伍棟さん、千春くん。」
…今、このタイミングで会いたくなかった人が現れたのだ……。
「2人してどうしたの?そんな大きな板持って…。」
清水さんは私と嘉賀くんが2人でいたのに大して気にしない様子で言った。
”清水先輩、嘉賀先輩の事が好きなんですよ?”
”先輩が嘉賀先輩といる時は特に酷いですよ。”
皐月のあのセリフが頭にこびりついて離れない。
勘違いされたくない。
言わなくちゃ。
”嘉賀くんとはただの友達”だって。
私の中は既にその事で溢れていた。
私は決心して、思い切ってそれを言おうとした。
しかしそれを遮るように清水さんが口を開いた。
「あ、そういえば、さっき美術室の前がパニックになってたから、覗いて見たの。
そしたら体育祭の下絵が切り刻まれてたんだけど、もしかしてその板はやり直す為の板なの?」
そう言われて、私は言いたかった事を引っ込めざるを得なかった。
「あ、そうなの。部長命令で。」
「ひどいよね。下絵、完成してたのに。」
清水さんはシュンとしながら言った。
そういえば、清水さんも昨日下絵を見たんだよね。
「じゃあ、私これから用があるから帰るね。大変だろうけど頑張ってね。」
清水さんは笑顔で手を振り、去って行った。
あれ…?何となくだけど、清水さん、妙に呆気なくない……?もっと絡んでくるのかと思ってたのに…。
私は妙な違和感を感じつつも、結局清水さんに言い出せなかった事が心苦しかった。
そして私は嘉賀くんと共に美術室に急いだ。