君への距離~クリスマスの奇跡~
かん吉と紗香は店で仕込み作業をしていた。
大鍋から立ちのぼる湯気が寒さのためかいっそう白い。
「もう今年もあと少しやな~」
日めくりのカレンダーをめくりながらかん吉が言った。
カレンダーは12月23日をさしていた。
「そやね~、今年は過ぎるのが早かったわぁ」
紗香がしみじみと言った。
「大阪から無理やり連れてきてもうたけたど、後悔してないか?」
かん吉は頭をかきながら尋ねた。
「してへん!ラーメン屋の女将もけっこうサマになってきたみたいやわ」
紗香が笑った。
かん吉もつられてゲラゲラ笑った。
「それに、いっぺんに子供が増えたみたいやし!」
「そやな、でも1月になったらあいつらにしばらく会えんくなるなあ」
「半年なんてすぐや!」
2人はまた顔を見合わせて笑いあった。