君への距離~クリスマスの奇跡~



「あれ?もう帰っちゃうの?」




リサはフライパンを洗いながら、玄関で靴をはく翼の方を振り返った。




「ああ、うん。


ちょっと泥棒にきただけだから♪」



ニッと白い歯を見せて微笑む翼にリサはなんとなく見惚れてしまい、照れ隠しで冗談を飛ばした。



「あたしを奪いに?」




翼は目を丸くしてリサを見る。




「え?えっと…」






「ふふふ、冗談です!」



リサは笑ってしまった。










目の前にいる、


優しくもひどく不器用なこの男に。







「へへへ、じゃあまたね!



狭くて何にもないとこだけど、ごゆっくり!」





「ふふふ、は~い♪



あ!翼くん!!」




リサに呼ばれて、半分出て行きかけた足をひっこめ振り返る。

「ん?」









「…メリークリスマス!」






―優しくも、




優しくも、




ひどく不器用なあなたに






心ばかりの応援(エール)を…








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