君への距離~クリスマスの奇跡~
「……」
「…杏ちゃーん?」
辺りはもう真っ暗、ぼんやりと映し出される巨大な、そして豪華な日本建築の前で子供2人のうち1人が騒いでいた。
「嘘だぁー…」
先をいく翼の腕を掴んで引き留めながら、杏は驚愕の声をあげる。
「嘘じゃないよ、今日はここに泊まるの♪」
「ええええ!!だってこんな…」
―高そう!高そう!高そう!
「こんな豪華な旅館…」
翼は予想通り、いや予想以上の杏の反応に笑いが止まらない。
「いいってば♪予約もとってあるし、杏ちゃんは何も心配しなくてもいいんだよ!」
「翼くん、まさかこのために…」
「ほら!いくよ―!!」
翼は杏の右手を握りしめると走りだした。
2人の笑い声が静かな庭園に響いていた。