君への距離~クリスマスの奇跡~
「シオまだ寝てんのかなぁ?」
ふと脳天気な声を出したのは翼。
マサキとリョースケとアツシと翼の4人は朝練のあと食堂に向かって歩いていた。
「お前じゃあるまいし、さすがにもう起きてるだろ!」
アツシがゲラゲラ笑う。
「きっとアレだ!今ごろアイツ、リサ姫といっしょにぃ…」
リョースケはまたもシオに呪いをかける。
「リサひ…何?」
翼は不思議そうに尋ねた。
マサキがそれに答えた。
「シオに彼女が出来たって知らんかった?リサちゃんって言うねんて!」
「リサちゃんて…」
―杏ちゃんの友達の?
「杏とよくいっしょにおるやんか」
―やっぱり
翼は不思議だった。
―確かに、リサちゃんがシオに好意を持ってたことは知ってた。
だけど…
「翼が、最近バイトばっかで杏にかまってやらんからすねてたぞ?」
マサキがニヤニヤしながら言った。
「かん吉パパに怒られるぞ?」
リョースケも翼を小突く。
「も―うるさい!」
翼はリョースケを押しやる。
「あ」
リョースケが驚いた声をあげる。
食堂の入口からリサが出てきたからだ。
「あ」
リサも気づいてリョースケに軽く会釈する。
ふとリサの視線が隣の翼に移る。
射るような視線。
そしてそのまま翼たちの横を足早に通り過ぎていった。