君への距離~クリスマスの奇跡~


杏を見たとたん吉田は泣きそうな顔でこう言った。




「ごめんなさい!!





平尾君には彼女いるって知ってたのに…





あたしも好きだから、




あんなことされても拒めなくて…」







(…拒めなくて?じゃああのキスは、翼くんから?)







ショックのあまり声が出ない杏にさらに追い討ちをかけるように吉田は涙を流してみせた。





「ごめんなさい!




あたし諦めるから、



平尾君にも…諦めてもらうように言うから

だから、平尾君を責めないで!」






「あ、あの…」



杏はスポーツバッグから使わなかった水玉模様のタオルを取り出してそっと泣き出した吉田に手渡した。






「翼くんは…あなたが、好き…なんだよね?




なら、…あきらめるのはあたしのほうだから




だから、…泣かないで!」






杏は精いっぱいの笑顔でそう言うとシャンプーを置いて店から出ていった。





ぐんぐん速度をあげて、杏はかん吉ラーメンに駆け込んだ。






びっくりしたのはかん吉。




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