君と僕と、魔法鏡

第壱章 鳩と鴉と望むもの

籠の中の鳩

カーテンの隙間から漏れる、日の光が鳩(ﾄﾞｰﾊﾞ)の寝ているベットに注ぎ込まれている。

流石に睡眠の邪魔になったのか、鳩は眠そうながらも、めんどくさそうに布団から出る。

ベットに腰掛けるようにして座り、髪を左右に振りながら、欠伸を溢す。

次に、真紅の瞳を手で擦りながらもカーテンの方を見上げた。



『……眩しい』



太陽に訴えかけるように小さく、かすれるような声で鳩は呟いた。

起きたばかりの重い身体を起き上がらせると、足を窓の方へと急がせた。

その際、椅子に掛けられていた上着を自分で羽織る。

季節は春間近の冬どき。

流石に少しばかり、肌寒かった。

手でカーテンの届く位置に達すると、両の手で同時にそれを開けた。



『……うっ…』



思わず、悲観の声が漏れる。

同時に窓の外から、先程見た光よりも強い光が鳩を襲う。

思わず、鳩は目を細める。

窓の外を見ようとしても、単に白い光しか見ることが出来ずに目を背けた。

部屋中に光が反映され、所々あった物の形影が一瞬にして消えていく。

これだから朝は苦手なんだ。

目が慣れたなと感じたころ、再び鳩は窓の方を見た。

しかし、眩しいことには変わりなく、相変わらず目を細めずにはいられなかった。

ようやく窓の外を鮮明に捉えられるになると、鳩は微かに笑みを浮かべた。

そして、窓も開ける。

窓から入る風の影響を受け、開かれたカーテンはなびき始めた。



『…今日も天気がいいなぁ』



空を見上げると、透き通った白い雲が軽やかに浮かんでいる。

度々、そこに通る鳥たちに鳩は釘付けになったいた。

羨ましい。

そう感じたのは確かだ。

鳥が空を飛べるように、自分も飛んでみたい。

誰にも束縛されず、自分の意思だけで誰も知らない場所へ行ってみたい。

そんな衝動に鳩は駆られていた。

……嗚呼。



『…外に出たいなぁ』



気づいた時にはもう虚しく、言葉に出していた。

反射的に手で口を慌しく閉ざすと、部屋に誰もいないか確認する。

部屋に自分ひとりしかいないと確認すると、思わず安堵の息が漏れた。