君と僕と、魔法鏡
安心したのもつかの間。
窓の外からは、いちだんと冷たい風が入り込んでいるせいか、鳩は身体を震わせる。
『…コホッ……』
次第に鳩の口から咳きが零れ、身震いをする回数も増える。
そんな時、鳩の後ろから何の前触れもなしにひとりの男に現れた。
鳩と窓の間に分け入ると開かれていた窓を男が閉める。
男は鳩よりも背丈は少しばかり大きく、綺麗な顔立ちをもしていた。
緑色をした瞳を彼の性格を現すような、綺麗なものだった。
鳩の方に振り返ると、鳩に対してか笑みを浮かべた。
一方の鳩は、小さく咳きをし続けながら、表情を少しむっとさせていた。
「体調が悪いんなら、窓を閉めとかなきゃ。また、病状が悪化するだろう?」
『分かってる……蓮(レン)…』
蓮と呼ばれた男は生意気そうに言う、鳩の頭を2回程、優しく触った。
鳩は大人しく、されるがままだった。
『で、一体何時からそこにいたんだ?』
そう言うと、蓮はくすりと笑い、鳩のベッドに背中から倒れる。
…話す気すらないな。
鳩は憶測ながら、何気に勘づいていた。
倒れたかと思えば、鳩に手招きをしてこっちに来てと言わんばかりのこの表情。
鳩は溜息を付くも仕方なく、ベットに腰を掛けた。
それと同時に蓮も同じようにベッドにして腰を掛ける。
二人の視線がお互いを見つめるように交わされると、蓮は思わず微笑んだ。
先の読めない男だと鳩はいつも思っていた。
「鳩はこんなところに軽く軟禁されて、病状も悪化する一方だね」
それは禁句だと、蓮に言ってやりたかった。
そんなこと言われたら、ここから動くことも間もならない僕は一体どうすればいいんだよ。
それから、お互い何処かぎこちない。
その場の空気が静まり返り、時計の秒針の音すら耳に入る程だった。