王様と料理人
「ダ、ダイジョーブ。トーコちゃん。誤解なんてしてないから。…あ、あの…何て言うか……うん。頑張ってね!!」

茹で蛸のようになりながら、言いたい事だけ言って立ち去るサリ。

「あ、待てサリ!…トーコ、この間のお菓子美味しかったよ。色々と頑張って。ラウル様、失礼します。」

きっちりラウル様にも挨拶してサリを追い掛けるスイ。

「うわ、オイ!…トーコ、ラウル様、頑張れ!」

なぜかラウル様まで激励して立ち去るルカ。

「か、完全に誤解された…。」

慌ただしくいなくなった3人組に、取り残された私達。

「ね、誤解だよねー。俺、まだトーコちゃんに無茶した事ないもーん。」

そんな事、永遠になくていい。

「とりあえず、離れてくださいラウル様。」

「えー。気持ちいいからこのままがいい。それよりトーコちゃん、さっきの3人とはどういう知り合い?」

「先日、『噂の料理人』を見物するために厨房を訪れた3人組です。…キモいんで離れてください。」

「ふーん。随分と仲良しだね。」

シカトだ。
なんだか不機嫌そうなのは気のせいだろうか。

「仲良くはないですよ。その時以来会ってませんし。年が近いのでそう見えるんじゃないですか?」

城内では明らかに年上と分かる人の方が多いので、同年代というだけで少し気安い感じがするのだ。



< 30 / 47 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop