王様と料理人
料理人の噂
「えっ!?アレが?」

…またか。
またなのか。

食材研究のために厨房に籠もっていた私の背後から聞こえてきた声。

おそらく、ラウル王専属の料理人になった私を覗きに来た城内関係者。

もうピークは越したとは言え、一体いつまでこの見世物状態が続くんだろうかとげんなりする。

そりゃあね、美食家で有名な王様が一口食べただけで気に入って召し抱えた料理人…なんて聞いたら、気になるのは分かる。

だからって、わざわざ自分の仕事の合間にチョロチョロ覗きに来るってどうなの!?

くっそ、暇人どもめ!

背後にコソコソ感じる気配を蹴散らすために、私は横の棚に置いてあった籠を掴み立ち上がった。

そしてずんずんと出入口の気配に近付いていく。
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