王様と料理人
カンダトウコ。
…神田桐子。

それが私の名前。

この世界では誰も呼んでくれない私の名前。

「名前を呼ばれることがこんなに嬉しいなんて、初めて知りました。」

知らず知らず、涙声になってしまう。

『泣くな、桐子。俺が泣かせたみたいに見えるだろう。』

いささか慌てたようなラウリエル様の声。

「実際泣かせたくせに。トーコちゃん、泣くなら胸貸すよ。」

ラウル様が両手を広げて待っているが、見なかった事にする。

「トーコちゃんてば照れ屋さんだなー。…それにしてもラウリエルは随分とトーコちゃんが気に入ったみたいだね。」

「私も驚きました。まさか魂名の守護を施すとは。」

「魂名の守護?」

『…魂に刻み込まれた名に、守護の法を施すことだ。』

「滅多にやってくれないんだよ、ラウリエルのお眼鏡にかなった人だけ。」

「歴代の王でもダメだった方がいらっしゃいますから。」

そ、そんなに凄い事なの?

「ラウリエル様。」


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