王様と料理人
「リーザさん。」

お城の、と言うか、王家付の医師であるリーザさんが居るという事は。

「ここは…医療室ですか?」

「そうよ。」

何やらカチャカチャと棚の中を探りながら、返事をくれるリーザさん。

「驚いたわよ。あのバカがトーコちゃんを抱き抱えて走ってくるんだもの。とうとう実力行使して変な薬でも飲ませたのかと思ったわ。」

…物騒な。

でも、ラウル王ならやりかねない。

それにしても。

「ラウル様をバカ呼ばわり出来るリーザさんが羨ましいです。」

「トーコちゃんもすりゃいいのよ。」

…したいのは山々ですが、さすがに出来ません。

私の憮然とした表情を見たリーザさんは、緑色の液体の入った小瓶を片手に苦笑した。

「ごめんごめん。トーコちゃんには無理よね。ラウルが王位を継いでから、リュウですら敬語だもんねぇ。」

そう。
ラウル王とリュウさんとリーザさん、3人は学友だったらしいのだ。

しかもかなり親しい間柄だったようで、リーザさんの口調には王に対する敬意などは毎回微塵も感じられない。

「とりあえず、はいコレ。」

いつのまにやら緑色の液体は小瓶からグラスにうつされていた。




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