僕の頃
ざわつく廊下を俺はしかめっ面で歩く。その後ろから好奇心旺盛な花菜が着いてくる。
俺が5組の扉から5組の教室を覗くと、1人の男子生徒が表情を和らげ大きく手を振ってきた。
「尚樹!」
「おう。なぁ、ムライシンジって奴おる?」
「村井?あぁ、おるで。なんか用かぁ?」
「洋太郎ってその村井って奴と仲良い?」
「俺?まぁ、普通かなぁ。」
俺は5組内を見渡した。
村井慎治の存在を、俺は容易く確認できた。それもそのはず。村井慎治は複数の女子の輪の中に、1人立っていたからだ。
きゃっきゃ騒ぐ女子の中で、硬い笑顔を見せる村井慎治。
「・・・あんなん嫌やんなぁ。」
思わずそんな言葉がこぼれた。
「おい!尚樹!聞こえるで!」
「へ?」
女子の輪に目をやると、確かに俺は睨まれている。
「謝っとけって!」
小声で洋太郎に囁かれた俺は、顔を歪ませた。