僕の頃
アイツは今、街の隅の霊園で深い眠りについている。
12年間、ずっと。
霊園までは洋太郎の車で向かった。三人の中で洋太郎だけが地元住民で俺は東京に、夏芽は愛知に住んでいる。
こうして三人で会うことなんて、普通ならまず有り得ない。だけど今日は特別。
アイツに会うために有給をとった俺と夏芽。こうして三人で会うのは、まさに12年ぶりだったりする。
「最近どう?」
前を向きながら洋太郎が言った。助手席に座っている俺は夏芽の方を見た。
「私?下の子が幼稚園入ったよ~。」
「美緒ちゃんだっけ?」
「そうそう。上の子はもう小学2年生だよ。早いよねぇ。」
苦笑いをする夏芽は窓の外を眺めた。その横顔はあの頃と何一つ変わっちゃいない。
『ではお次のナンバ~!』
軽快なラジオDJが投稿者の葉書を読む。別に聞く気もないけど、なんとなしに耳を傾ける。
『ラジオネーム、りっちゃんさんのリクエスト!井上陽水さんで「少年時代」。』