黒い天使―私と天使の秘密な関係―




「ただいま……」



真桜が帰ってきた。


会社を早退したことは知ってる。


だけど帰って来るの早過ぎだろ。


ヤバいな……。


こんな姿を見られたら……。


真桜が帰って来るまでに胸の痛みを抑えたかったけど間に合わなかった。


"おかえり"と言ってやりたいけど、胸が苦しくて声が出ねぇ。



「レン?いないの?」



食器棚を隔てた向こうに真桜がいる。


真桜には俺の姿は見えていない。


頼む……早く治まってくれ……。



「レン!?」



真桜の驚く声が聞こえた。


顔を上げると、目を見開いた真桜が俺を見ている。



「おか……えり……」



何とか言えた。


笑ってやりてぇけど、そんな余裕ねぇよ。



「レン!?どうしたの?」


「大……丈夫……だから……」


「大丈夫なんかじゃないじゃない!」



真桜が俺の前にしゃがみ込む。


目にいっぱい涙が溜まってる。


なぁ、真桜?


何で泣くんだよ……。


笑えよ。


笑ってくれよ。




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