論理的サイエンティスト
僚右君は全部わかってて、あたしに何も聞かなかったんだ。
「俺ね、あんまり雨來先生のこと好きじゃなかったんだよねー」
「へ?」
いきなりそんな話をしだす。
さっきの今で少し噛み合ないけれど、とりあえず聞いていた。
「初めて会ったとき、俺こんなんでもすごい緊張しててさ。だから同じ歳の雨來先生みたときむちゃくちゃ嬉しかったんだ」
なのに、と僚右君が続けて。
なんとなく、その先に待ち受けている渚の態度が想像できて怖い。
「雨來先生、なんて言ったと思う?何も言わないんだよ!?俺がよろしくお願いしますって言ったら!無言でドア閉めるんだよ!?」
う、うわー……。
渚ならやりそう、てか絶対やってる。
僚右君が顔をしかめて半狂乱みたいにしゃべる。
あたしはその情景が思い浮かんで苦笑いを浮かべてしまった。
「俺の緊張と安心を全部薙ぎ倒して、そしたら先輩達のがもうよっぽど優しいと思ったね」
美味しそうなモンブランと温かい紅茶を前にして、ふーっと僚右君は息を吐いた。